企業で働いている時、早く仕事を終わらせ過ぎても(よくない)、と教えられたことがあった。
あまりに早く仕上げてしまうと、見積もりの時間に合わないとか、簡単な作業だと思われてしまうとかそういったようなことが理由だ。
教えられた当初は、くだらない冗談ぐらいにしか受け止めなかったが、何度か指摘されるにつれて、それが本気なんだと気づくようになった。
仕事が早く終わりすぎると困るのは、時間を売っているからだ。時間を使って創りだす何かを売っているのではなく、その人間に割り当てられた時間を売っている。
時間は万人に平等に与えられているから、逆にいうと、与えられた時間を売ることは、代替するソリューションがいくらでもあるということになる。
顧客は人が持っている時間だけに着目するようになり、競争によって労働単価はどんどん下がっていく。コモディティ化だ。
パーキンソンの法則というものがある。
仕事量は与えられた時間分膨張していくというものだ。その仕事がなんであれ、納期までの時間分どんどん増えていくということだ。
時間を売っている、つまり、働いた時間が少なすぎると損をするという概念を持ち続けていると、パーキンソンの法則が働くことを止めることができない。
例えば、一つの作業を早く終わらせる事によって、新しい作業を受け持つことにより、自分の担当する範囲を広げることができる。さっさと仕事を終わらせて家に帰り、将来に向けての学習に励むこともできる。
時間が作り出す短期的な金銭にとらわれていては、その時間が中長期で創りだしたかもしれない新たな価値を手に入れることはできない。
今自分が何をやっているか、何を創りだしているかを常に気にしていなければ、パーキンソンの法則に取り込まれてしまう。毎月に許された残業分の時間を目一杯使って、与えられた仕事を仕上げる流れに飲み込まれてしまう。
重要なのは疑問を持つことだと思う。
人から学ぶこと、人に教えを請うことはとても重要なことだ。しかし、教えられたことを無条件に受け入れるのではなく、取り込むべき要素のみを抽出して取り込むべきだと思う。
さっさと終わらせることに価値を感じてもらえないからと言って、だらだらと作業を行う必要はない。さっさと終わらせることをどう価値として見せるかを考えるべきだ。作業の早さに価値を見出さない職場は捨てて、作業の早さを価値と認める職場へと移るべきだ。
価値は早さだけではない。正確さ、丁寧さ、文章力、問題把握力、調整力、語学力など、なんでも価値になる。
ただし、積極的に自分の価値について向き合わなければ意味が無いし、自分だけが価値だと思い込んでいても意味が無い。
他人にはない自分の中の商品を探す。自分だけが持っているわけではなくても構わない。他に自分より英語を話せる人がいたとしても、自分より英語を話せない人がいるのであれば、英語力は価値の種になる。
次に重要なのはマーケティングだ。
見つけた価値の種に本当に価値があるかを確認する。他人が価値を感じ、お金を払うかどうかを確認する必要がある。確認作業は数日で終わるかもしれないし、数年かかるかもしれない。
今では、仕事の早さを自分の価値の一つにしている。
早く終わらせ過ぎて、などということは微塵も考えない。
可能な限り素早く仕事を終わらせ、次の検討につなげる。鉄を熱いうちにどんどん打っていく。
結果として頂ける報酬が少なくなったとしても、それは一時的なものにすぎない。仕事の早さに本当に価値があるのなら、必ず次に繋がるからだ。