IT業界は個性へ傾いていく

羽生善治さんの著書を読んでいると、かなりの確率で登場される今北純一さんの著書を読んでみました。

「今北純一著 仕事で成長したい5%の日本人へ」

淡々とご自身の経験や経歴とともに、そこから学んだ経験を語っていらっしゃいます。

繰り返し述べられている、「個」の重要性。私自身が日本の企業に属していて、最も疑問を感じ続けていたのが、個性を良しとしない風潮でした。

個性こそが新しいアイディアを生み、個性こそがイノベーションを生むことは、世界中の事実が証明しています。個性を蔑ろにするあまり、旧来の日本企業がイノベーションのジレンマに陥り、どんどんと危機を迎えていることも我々がまさに目の当たりにしていることです。

かといって、私が一緒に働いていた同僚に、個性的な考えを持つ人や、個性的な仕事をする人が、いないとは思いませんでした。むしろ、仕事の中で存分に個性を発揮しながら、日々のタスクをこなしていました。ただし、それらの個性が発揮されるのは、狭い狭いフレームの中だけなのです。そのフレームを飛び越えて個性を発揮し、新しいことを試し、既存の概念をぶち壊すことは良しとされないのです。

実績のある作業、実績のある設定、実績のある機器、実績のある手順、実績のある構成、枯れた技術、実例、導入事例、そんな下らないフレームの中でしか個性を発揮することは許されないのです。

どんなに新しいことを思いつき、どんなに新しいことを試そうとしても、所詮は「実績のある〜」が優先されるのです。なぜなら、個性を承認する側に個性がないし、ブレイクスルーなど必要としていないからです。ブレイクスルーのために挑戦を繰り返されるよりは、穏便にことを納めてくれた方が、いいと考える人ばかりなのです。

これでは組織は保守に倒れていくだけです。「やったことのないことをやるのは、できるだけやめておこう」という思考が働き、判断には常にバイアスがかかるようになるのです。

私が見てきたIT業界はまさにこれでした。新しい技術、新しい方式を試さない、試すことを良しとしない環境です。これでは世界は一つも良くならないし、新しいことも生まれません。生まれるのは「作業」だけです。

決められた手順通りに、決められた設定を、決められた時間でやる。ただの「作業」です。イノベーションもへったくれもありません。作業から新たな価値は生まれないでしょう。作業の中で、個性は毎秒死んでいくと思うのです。

私はこの本を読んで確信しました。

日本のIT業界はすごいスピードで個性にシフトしていく。個性を殺す階層構造、ITゼネコンは淘汰され、個性を持ったエンジニアたちがどんどんと独立し、個性主体の開発が主流になっていく。

数十人〜数百人を作業に使う開発では効率も悪く、ジリ貧なのは明らかです。日本が数百人で生み出すシステムよりはるかに素晴らしいシステムが、海外企業の個性的な数人のチームによって生み出されています。

私には、個性的なエンジニアが独立することはもっと一般的になり、時には凌ぎを削り、時には徒党を組んでいる社会がすでにはっきりと見えています。そして、一秒でも早く、そういう社会が訪れればいいなと日々考えています。

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