月別アーカイブ: 2014年8月

「コミュニケーション能力」への違和感

今更感もありますが、コミュニケーション能力という言葉の使い方に違和感があります。

コミュニケーションというのは送り手と受け手で成り立つ意思の疎通のことを言う訳ですが、本来、送り手が伝えたいと思ったことがどれだけ正確に受け手に伝わっているか、送り手の伝えたいと思っていることをどれだけ正確に受け取れるか、ということがコミュニケーション能力の本分であるはずです。

ですが、昨今のコミュニケーション能力の意味は、「思いやり」だとか、「優しい言い方」だとか、「話が面白い」だとか、そういう人柄の部分に重きが置かれており、「伝達したいことを可能な限り正確に伝達する能力」は重視されていないような気がします。

 

コミュニケーションについて正確に把握するために、コミュニケーションをステップに分割すると、以下のようになります。
1.送り手が伝えたい事を思いつく
2.送り手が独自の経験等に基づき、伝達切り口を決定する
3.送り手が言葉にする
4.環境、情勢などの外的ノイズが送り手の言葉に付加情報を与える
5.受け手の耳に入る
6.受け手が送り手の言葉を独自の経験等に基づき、解釈する

私が考える限り、上記のような6つのステップを経て、送り手の考えが受け手に伝わる事になる訳ですので、ステップ1とステップ6では全く違うこととして伝わっている可能性もあります。

本来のコミュニケーション能力というのは、1と6の差分を定量的に確認し、1と6が限りなく近づくまで繰り返し繰り返し伝達する、あるいは、繰り返し繰り返し確認する能力のことを言うはずです。
ところが、最近求められているコミュニケーション能力というのは、2と6の部分がいかにそつなくできるかというところしか見ていないように感じます。

コミュニケーション能力の巧拙で考えると、伝えようとする切り口、解釈の切り口がどうあれ、伝えられたか、受け取れたか、が重視されるべき点です。そつなく出来ていなくても、1と6の差を可能な限り埋めていれば、笑顔で話すことよりも評価されるべきなのです。

面白い話ができるとか、笑顔で話せるとか、そういったところは会話の雰囲気作りに関するテクニック的な能力であって、コミュニケーション能力とは違うものであると思います(重要ではないという意味ではありません)。

私は、コミュニケーション能力という言葉を、面白い話をする、笑顔で話せる、という意味で使っている人ほど、本来のコミュニケーション能力に劣っているように感じます。

そういう人に限って、「伝えたはずだ」、「言ったはずだ」、「言っておいたのだが」というような一方的通達をコミュニケーションととらえているような発言をしがちに感じます。

私は、誰かが「伝えたはずだ」、「言ったはずだ」、「言っておいたのだが」というような発言をしたのを耳にした場合、その誰かと仕事をするときは、必要以上に意図を確認する事にしています。

「言ったはずだ」などの一方的通達を行う人は、受け手も自分と同等の経験をし、自分と同様に考え、自分の言ったことを言った通りに解釈するはずであるという身勝手な前提の上で発言している可能性が極めて高いからです。

あまりに繰り返し確認すると厄介な事になったりしますが、問題が大きくなって面倒なことになるよりは、最初のうちに繰り返し確認してムッとした顔をされておいた方がいいと思っています。勿論、可能な限りムッとされないため、自分を下げるようなインプットを相手にあたえ、確認に持ち込むように誘導するようなテクニックは必要です。

私個人としては、面白い話が出来る人よりも、多少口ベタだったとしても、「受け手は絶対に送り手が伝えたい事と100%同じように解釈することはありえない」、とわかっている人の方が、信頼できると考えています。

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「人月商売の害悪」記事を読んで

中嶋聡さんのメルマガを読んでいたら、ITProの記事が紹介されていました。

IT業界の人月商売、多重下請けがもたらす45の害毒
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/watcher/14/334361/072100007/?ST=ittrend&P=1

すべての記事を読むにはITProにユーザ登録をしなければなりませんが、無料なので登録されていない方は登録してもいいかもしれません。
いろいろと書きたい事が浮かんでくるいい記事だと思います。

45も害毒があるということですが、SI’erの中にいる自分から見ると(もうすぐやめるわけですが)、概ね記事の内容は間違っていないと感じます。

おそらく、SI’erの中にも危機感を感じている人は少しは居ると思いますが、私のように、実際に出て行く決断をする人は非常に少ないと感じます(というか、出会ったことはないです)。
管理職の間でも危機感はあまり感じられず、社内では人月商売が永遠に続くかのような発言も多く見られます。危機感を感じている人は0ではないと思いますが、母数からすると0に限りなく近いのではないかと感じます。

記事と少しかぶる部分もありますが、私は46番目の害悪として、利益圧迫構造の負のスパイラルに入りやすい、というのを挙げたいと思います。

私の場合、人月商売でない業界から人月商売の業界に飛び込んだわけですが、人月における見積もりには、日増しに違和感をおぼえていきました。
優秀であろうとなかろうと、会社として「人月」ありきで値段設定がされるために、使うエンジニアに関わらず価格は一定になります。使われるエンジニアはどれだけ価値を示し、労働原価を抑えて利益率を上げようとも、多くの場合高い評価にあたりません。

ですから、定められた自分の原価範囲を超えないことにだけ気をつけて、ぎりぎりの労働時間でダラダラと仕事を行い、生活のために残業代を稼ぐことに違和感をおぼえなくなります。

私は入社当時、当時の本部長クラスの偉い人と対話する対話会というのに参加したのですが、その際にこの残業代の違和感に果敢に突っ込んだのをよくおぼえています。その当時頂いた回答が「そのうち慣れる」という閉口を妨げる素晴らしい物だった記憶が今も強く残っています。

原価感覚や利益感覚が薄れてくると、「どれだけ自分が忙しいか」、「どれだけ自分が長く働いているか」、というのが一つの優秀/非優秀の基準であると勘違いを始めます。そうなってくると始まるのは、長時間勤務の自慢試合です。

そのバックボーンの中で育ってきた管理職が評価制度を握り始めると、評価の基準は生産性や利益率ではなく、労働時間の長さ、どれだけ会社にいるか、が中心になってきます。
極論すると(私の中では全く極論ではないですが)、「プロジェクトを炎上させずに先手を打って立ち回り、お客様のため、会社のために全力を尽くして頑張った人」よりも、「自らのケツの甘さで着火材をまき散らしながらプロジェクトをすすめ、火がついたら上司に大変だ大変だと叫んで泣き言をいい、やってる感を出している人」の方が評価されるということになります。

人月商売が当たり前の環境下では、前者は、効率よく生産性高く仕事を進めているため、残業は少なく、傍から見ると仕事をしていない人のように見えます。後者は、傍から見るといつも仕事をしているように見えますが、効率悪く生産性低く仕事を進めている傾向が高く、残業は多いです。

炎上しないと評価されにくい状況ですと、どれだけ利ざやを稼ごうと、どれだけ問題を起こさない様進めようと、社内評価自体は上がりにくい傾向にあります。効率性を上げて残業時間を減らしているわけですから、手取り収入も相対的に低くなります。

こう考えている人がいるかはわかりませんが、適度に炎上していた方が自分の実入りはいい訳ですから、適当に進めておいて、適度に炎上させておき、必要なだけ残業して、手取り収入を上げておいた方が、自分にとっては都合がいいという事になります。

この状態が各プロジェクトで起こると、会社にとってはたまったものではありません。
人件費の割合が増えるため、営業利益がどんどん圧迫されていく事になります。人件費が上がると、設備費などの固定費も上がっていく傾向にあるとされていますので、倍々ゲームで営業利益は圧迫されることになります(というような根本的な利益構造がわかっている人はあまりいないように感じます)。

さらに名炎上プレイヤーが昇進しやすい傾向にありますので、その下で育っていく人たちはどんどんと炎上カラーに染まっていきます。炎上カラーのプレイヤーが増えるとさらに利益を圧迫し、会社にとってはボディブローのように効いてきます。そのボディブローを十年以上も喰らっていると、さすがに巨大な会社でも厳しい状況になると思います。

と、これが日本のIT企業(SI’er)の経常利益率が低い傾向にある理由だと思いますが、なかなか今後も改善は難しいようです。まずは粗利ベースの考え方を改めるところから始めていくしかないように感じます。

かつて私は、あるプロジェクトチームで、外出し・丸投げの構造を改め、自衛でエンジニアリングするように構造を改めたことがあります。
その際にも、「この会社の仕事のやり方と違う」、「リスクが大きくなるのではないか」などの批判や懸念を色々と言われました。私の場合は聞こえないフリをしてさっさとやりたいようにやってしまったわけですが、その後、チームの技術力はすごい勢いで高まり、生産性はかなり改善されました。トラブルにも強くなったため、生涯価値で考えるとかなり向上したと考えています。
私が抜けた後もチームがその状態を保っているかはわかりませんが、いずれにしても、あの当時の選択は間違っていなかったと考えています。あとはその生産性と評価が繋がれば、継続して好サイクルは生まれていくはずなのです。

日本のSI’erが今後も継続していくためには、利益構造を改める必要があると私は考えます。利益構造を改めるには、利益のでやすい仕組みづくりをするべきであり、売上や炎上で評価するのではなく、最終利益に対してどれだけ貢献したかで評価すべきであると考えています。

そうすることにより、数字にシビアなエンジニアや営業が育ち、サイクルを好転することができるのではないかと考えます。

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Crowd Sourcingに登録

クラウドソーシングの大手、Crowd Worksに登録してみました。

登録自体は簡単に済みますし、流れで楽天銀行も申し込んでおきました。楽天銀行だと報酬の振込手数料は100円ですが、他行だと500円です。仮に年間100件の仕事を受注すれば40000円の振込手数料差額となるわけですから、相当な差が出ます。

ネットワークエンジニアにとって一番いい働き方を模索するには、自分でいろいろ試してみるしかない訳ですが、家族の居る身としては、なかなか断腸の思いです。

どうも過去のちっぽけなプライドが邪魔したり、しょうもない実績にこだわりすぎて、自分の本当にやりたいことを忘れそうになってしまいます。

過去の積み重ねで独立という選択をとる自信につながってきたわけですから、こだわったところで意味のないことですね。右脳で理解して左脳で反抗するみたいな感じでしょうか。

 

自分の殻を少しずつ破ろうと、毎日新しいことを一つずつ挑戦しています。例えば、これまでメールすることができなかった方に連絡を取ろうとしてみたり、Crowd Worksへの登録もそうですね。

そうやって半歩ずつもがいていると、不思議とポジティブな事が自分の周りに起き始めているような気がします。明日も少しリフレッシュしたり、自分との対話を深めてみたいと思います。

新しいことって、なぜこうも難しいんでしょう(笑

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営業活動を開始しました

大手のシステムインテグレータでエンジニアとして働いてきましたが、個人事業者として活動することを決めました。最初から会社を立ち上げることはせず、少しずつ、一歩ずつ、前に進みたいと思います。

本当はかなり前から決めていましたので、決めましたと言えるようになりました、が正しいのかもしれません。

 

プロジェクトの区切りもあり、なかなか辞職日が決まらなかったのですが、およそ決まって来た事もあり、少しずつ手探りで前に進む努力をしています。

会社に所属していれば、いろんな面で都合がよく、それほど大変な思いもせずに仕事にありつくことができます。手探りで営業先を探していると、そのすばらしさに毎秒毎秒気づく事ができます。それに気づけただけでも自分は少し成長したように思っています。

 

本日は一件相談に伺ったり、自己紹介にあがったり、CrowdWorksに登録してみたりと、全くもって順調ではない船出でありますが、1ミリでも前に進めるように努力していきたいと思います。

oDeskや海外の他のサービスも登録だけはしておこうと思っています。エンジニアにとっての新しい働き方の一つになれるような、そういう生き方を目指したいと思います。

 

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