「失敗」と「再挑戦」の「難しさ」?

私が「独立する」とか、「独立した」とか言うと、決まって、「失敗したらどうするの?」と聞かれます。

最初は反論したり、諭そうとしてみたりと色々やっていたのですが、最近ではニコニコすることにしています。

失敗したらどうするのかは、失敗したときに考えることです。そもそも失敗の定義って何かわからないので、失敗って何だろうなと、心の中では思っています。

そもそも、私は学生時代に一度起業がうまくいかなかったことがありますので、これを「失敗」だと考えると、最初の「失敗」に関しては、「失敗したらどうするの?」という問いに対して、「色々あって大手のITゼネコンで正社員として働きました」という答えを返す事になります。世間一般的には、「失敗」したけど立ち直っています。

こういう事を言うと、大体、「運がよかったんだね」とか、「自分には無理だ」とか言われてしまうのですが、これにも少し反論があります。

運が良かった事は全面的に否定しませんが、仮に「運が良かった」だけ、だとしたら、いずれ肩たたきに合うか、面白い仕事をさせてもらえず閑職に追いやられていたと思います。少なくとも、私は閑職には追いやられず、楽しいプロジェクトをいっぱい経験させてもらえたので、独立しようと思いました。

「自分には無理」かどうかは、私にはわからないし、その人自身にもわかりません。確実なのは、「無理だ」と思っている人は何をやっても「無理だ」ということだけです。

他にも、「今の給料は惜しくないの?」とか、「生活苦になったらどうするの?」と聞かれますが、これもなぜ聞くのかわかりません。

これまでの給料については、機会損失的な考え方をすると、「惜しい」という発想になるかもしれません。しかし、私にとっては、自分が新しい経験をしてみることの方が、不明瞭な基準で支払われる組織の給与よりも価値が高いのです。つまり、私はもらえるはずだった給料を自分に投資して、新しい経験を得る機会を得たと思っています。ですから、給料が惜しいと思った事はありません。

「生活苦になったらどうする?」も、あまりよく意味のわからない質問ですが、やりたいと思っている仕事で十分な収入を得られなければ、「生活レベルを下げる」か、「その場しのぎの仕事をして収入を増やす」かのどちらかを選択します。一生懸命経験を積み上げてきていれば、実は引き出しはいっぱいあるので、色々と仕事は見つかるものです。「生活レベルを下げる」のも簡単です。例えば、車を持っているなら手放せばいいし、車が手放せないなら他のものを手放せばいいだけです。

生活費についても、事業のためだけに貯めたお金が運転資金となっているので、「失敗」してもそのお金がなくなるだけです。別に、なくなればまた何かの方法で貯めればいいので、これも「失敗」とは思えません。そもそも、事業資金や運転資金を貯められない、貯めていないで独立するとすれば、これは「無謀」なのか、「独立することに対する情熱がない」ということなので、論外です。

今回の独立も、「失敗」に終わったとしたら、また「色々あって大手のIT起業ではたらいている」かもしれません。世間的には「失敗」でも、私にとっては「成功」で、違う道を歩んでいるかもしれません。

妻にもしっかりと思っている事、事業がうまくいかない可能性もあることを伝え、何度も理解しているかどうかを確認しているので、納得の上で一歩を踏み出しています。

「失敗」を恐れる気持ちもわかりますが、悩みのジャグリングの中で不用意に不安に思う必要はないと思います。

そもそも「失敗」の定義が曖昧です。起業したところで最初からうまくいくはずないので、それを「失敗」としてしまったら、何も始まりません。

私も含めて、「ITエンジニア」という、世間一般的には「ワケの分からん」ことを仕事にしている人は、多くの独立のチャンスと、多くの救済のチャンスに恵まれていると思います。

世間一般的に「ワケのわからんもの」と「それを作れる」というところの間には、我々が考えている以上のギャップがあるわけで、それを埋める作業には多くのビジネスチャンスが転がっているはずです。そのギャップを大企業が根こそぎ搔っ攫おうとしても、できるはずがありません。

仮に大部分を搔っ攫われたとしても、ぽろぽろとこぼれるチャンスを丁寧に拾っていけば、個人エンジニアが活動していくチャンスは大いにあるはずです。チャンスがなきゃないで、また色々と考えてみればよいと思います。

多くの場合忘れられがちですが、「独立することを選び実践した人」は、「独立することを選ばなかった人」よりも、遥かに短い時間で、遥かに多くの経験を得ていることは間違いありません。ストレス耐性や、顧客折衝においても、比較にならない勢いで成長します。

そう考えると、何百万円かのお金を使って、「独立する」という経験をしてみるのは、非常に効果の高い投資であると考えざるを得ません。そして、自分が既に「失敗」を経験してしまっているだけに、「再挑戦の難しさ」には、疑問符を打たざるを得ないのです。

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